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【著書】ノーベル物理学者が教える「自分力」の磨き方 益川敏英【要約】

こちらは、益川敏英著の『ノーべル物理学者が教える「自分力」の磨き方』の要約になります。

 

はじめに

 

成績が良くなかった私がなぜ、ノーベル賞を取るほどの成果を残すことができたのか。それは、私が自分の「向き・不向き」に気付くことができ、自分の「好きなこと」「興味のあること」に集中することができたからです。自分の「憧れ」に気付き、いかにその「憧れ」へとアプローチしていくか、そして成果へとつなげるか。あくまでも私なりの方法論ですが、それを「自分力」と呼びたいと思います。

 

序章

 

私が考える「自分力」の第一の定義とは、「好きなこと」「興味のあること」をとことんまで突きつめて、結果へとつなげられる力のことです。これは個人力(自分ひとりで何かを作り上げる力)とは異なります。ひとりでやりやすいことは「個人」でやればいいし、逆にひとりでは実現できないことは他の人の「個人力」に頼ればいいのです。自分力の高い人は時代や環境が変わっても生き残ることができます。成熟社会の日本では既存の価値観にとらわれることなく、新たなことに挑戦できる人が必要とされています。このようなイノベーションを実現できる独創性は自分力が不可欠です。次章からは、自分の「才能」の見出し方、「自分力」の高め方を考えていきます。

 

 

第一章 才能を意識することから「自分力」は生まれる

自分の中の「種」を見つける

「自分力」の高い人になるためには、まず何をするべきなのでしょうか。最も大切なのは、自分の中にある才能を見つけることです。もしも人生の選択肢のスタート位置を間違ってしまうと、自分が望む自分と、現在の自分はどんどんかけ離れていってしまいます。まずは、原点つまり自分の奥深くに潜む「憧れ」「夢」を再確認してみてほしいです。

 

才能とは可能性にすぎない

人生においていくつかの道の中から一つを選ばなくてはならない場面が出てきます。その時は、「憧れ」や「夢」へと近づく方向を選びましょう。もし、「好きなこと」や「興味のあること」に出会えていないなら、まずは「まだ自分がやっていないこと」にチャレンジしてみましょう。才能と言うと、他の人よりも秀でている必要があると感じるかもしれませんが、決してそんな必要はありません。私は、不器用で頭もいいわけではありませんが、子どものころからの「憧れ」である物理学の分野に進み、情熱を持って仕事に取り組むことができました。

 

自分の才能に気付くヒント

自分の才能に「気づく」ための第一歩は、自分と対話することです。みなさんは一人ひとり異なる環境、世界で生きているわけですから、まずは自分自身に問いかけて、自分自身で答えを出す、という習慣を心がけてほしいと思います。私は子供の頃、自分で自分に問いかけたときに、まず最初に考えたのは「人と違うことをやりたい」ということでした。他の人と同じことで競争するのはいやだ、と思ってしまうんですね。これは職人気質だった父親の影響です。周りはあなたに具体的に何かを教えたりはしません。だから、みんなもっとわがまままに、自分らしさを追求していいんじゃないかな、と思いますね。

 

「おもしろい」という感覚を大切にする

私はもともとひとりでいるほうが好きな子で、読書や音楽を聴いたりしていました。いつの頃からか、数学や物理の本・論文に夢中になって読むようになりました。数学に興味がありましたが、私が大学生の頃の数学は「ブルバキ学派」。これは「考える」よりも「整理する」ことに重きを置いているようにみえ、数学ではなく物理に進みました。今でも数学の本はよく読みます。単純に面白いから読むのです。この単純に「おもしろい」という感覚こそが、実は自分の中に隠れている「才能」に気付く大きな要素なのです。

 

思い込みが「得意」をつくる

私は自分は数学や物理に向いているのではないか、と考えるようになりました。これは、錯覚と言ってもいいくらいの思い込みでした。私は、好きなことや興味のあることに対しては、けっして尻込みすることなく、自分はそれが得意なのだと思い込むのも大切だと思っています。私は英語が不得意です。中学の英語の授業で「money」を「モネー」と発音し、笑われたのがトラウマになり、英語をまともに勉強しなくなりました。こんなちょっとしたことで、興味や関心は変化してしまうのです。

 

きっかけは「憧れ」でいい

「好き」とか「得意」と言った意識は「憧れ」から来ると思います。私が物理学に興味を持ったのはアインシュタインへの憧れがきっかけでした。そこから名古屋大学の坂田理論を知り、物理の研究をしてみたい!と思い、研究者の道に進みました。

 

憧れに向かって一歩を踏み出す

もし「憧れ」を見つけることができたら、次にその「憧れ」に近づくためにどうすればいいか、を考えるべきです。私は坂田理論の研究現場がある名古屋大学理学部を目指しましたが、どうすれば名古屋大学に合格できるのかを考えました。

 

好きなことなら、夢中になれる

目の前にある常識的な選択肢の中から一つを選ぶくらいなら、多少のリスクを冒しても、自分の中にある「好きなこと」や「興味のあること」を追求してほしいと思います。私は物理の研究が面白く、周りが見えなくなることもあります。寝食を忘れるほど没頭できることに出会えること。それが「才能」の種のはずです。

 

 

第二章 自分と向き合って「自分力」を磨く

知ることは楽しいこと

私はそもそも「勉強」という言葉が好きではありません。この漢字は「生みの苦しみ」を表現しているそうです。一方、英語の「study」は「知る楽しみ」が語源です。好奇心を持って様々なことに首を突っ込み、楽しく知ること。そのように取り組む姿勢が大切です。

 

読書で自分の興味・関心に近づく

私は、小・中学生の頃は全く学校の勉強をしていませんでした。そんな私が、小学校の高学年になった頃から夢中になったのが読書でした。子供の頃から本を読むという習慣を身に着けておけば、興味や関心も広がってくるはずです。

 

「理解する」ための日本語力

自分が見たり聞いたり読んだりしたことを、まずは正しく理解するということが重要。理解するために必要なのが、正しい日本語力、国語力です。数学の理解もまずは九九などから知識を積み重ねて理解します。国語も同様なのです。

 

知識や経験を1つにまとめる

ある程度自分の興味や関心のある分野を絞り込むことができたら、今度はそれをコヒーレント(整合的・一貫性)に学び、積み重ねていくことが必要です。力とはなんでもそうですが、反対の力を加えたら打ち消しあってしまいます。ですから、力をまとめて一つの方向へと導くことが必要になるのです。

 

制約の中で思考する

私たちが生きている世界は、制約があります。ですから、「限られた条件の中で知恵を絞る」という訓練も、自分力を高めるためにはとても大切です。限定された条件のもとで力を発揮するためには、俳句のように、ある程度の枠にはめる、という手法が役に立つことがあります。

 

常に目標を意識して行動する

目標を設定したら、自分がその目標に少しでも近づいているのかを振り返り、チェックしなければいけません。私は学生に「眼高手低」という言葉を伝えています。本来の意味は違いますが、「目標や志は高く、身近なところから始める」という意味で教えていました。一方で、「そもそも、その目標は正しいのか」についての検証を重ねることも大切です。目標を変えることは悪いことではありません。ただし、その時も高い目標を設定してください。

 

理解や記憶よりも挑戦を

研究の世界でもビジネスの世界でも、秀才でありながら冒険することなく無難な道を行く、という人がいます。しかし、一流の仕事で大切なのは独自の視点、アイデア、独創性です。独創性には、自分の限界への挑戦や冒険なくしては実現できません。まさに、「自分力」をいかに発揮させることができるかがポイントです。

 

自分で考えるクセをつける

日本の大学入試は、必要なことをインプット・アウトプットすることだけを重視し、「考える」ことを軽視しています。私も大学入試のために意味のない日本史・世界史を丸暗記しましたが、それでも自分の頭で考えて、自分自身で答えを出すことの方が重要だと思います。

 

 

第三章 ムダなことをして「自分力」を磨く

なるべくムダなことを心がける

私は「自分力」を磨くために、もっとムダなことをしろと言いたいですね。誰かのためとか、そんなさもしい考えではなく、純粋に楽しいことを追求してほしい。そこから、自分で考えるクセが付きます。

 

「はやぶさ」が帰還できた理由

無人の惑星探査機はやぶさは必要最低限のものが搭載されています。しかし宇宙に行った際、エンジンが故障しました。ところが、技術者が遊び心でこっそり入れていたバックアップの配線のおかげで、はやぶさは帰還できました。このように、効率も良いことですが、ムダなことも成功には必要だと思います。

 

知識の幅が結果につながる

学問や知識は、一つのことだけに集中しても応用がきかないことも少なくありません。私も、大学時代は物理・数学をウロウロし、一時脳の研究にも興味を持ちました。一見するとつながりのなさそうなことにも首を突っ込めば、思いもよらない結果を生むこともあるでしょう。

 

1つのことに集中しすぎない

1つの分野で真剣に学ぶと同時に、性質の違う分野にも半分くらいの真剣さで取り組んでみることをお勧めします。私はかつて一つのことにハマってしまい、10年ほど棒に振ってしまいました。一つのことに集中しすぎるとダメなこともあるということです。

 

未知の出会いをおもしろがる

専門性が異なる人との出会いは刺激になります。統計物理学をやっている人とたまたま雑談をすると、それが一つの論文になったことがあります。このように、私は様々な「雑音」を取り入れるよう意識しました。

 

先人の力を借りて思考を明確にする

先人の思考は自分自身が何かについて深く考えるうえで必ず役に立ちます。私はヘーゲルの自由についての考えが今でも印象に残っています。先人の思考は形のないものに形を与えます。

 

雑音の中で集中する

私は考えるときはよく歩きます。なぜなら少し雑音のある感じが、実は集中して考えるには最適だからです。京大にいたころはよく歩き、車に轢かれそうになったものです。

 

生活のリズムの中でアイデアが閃く瞬間

基本的にはある程度リズムのある暮らしをしていたほうが、脳も正常に働いてくれるような気がします。ノーベル賞受賞のきっかけとなった「6元クォークモデル」も研究漬けの毎日で思いついたものではありません。ちなみに、これはお風呂に入ってリラックスしたときに気付きました。

 

ゴールまでのプロセスを楽しむ

目標に一歩一歩進むことは大切ですが、ゴールにたどり着くことだけでなく、そのプロセスも大事です。プロセスの中にはムダ、回り道などもありますが、そこからあらゆる可能性に対応できる力を養うことができます。

 

 

第四章 人と向き合うことで「自分力」を磨く

「チーム力」によって目標に近づく

人と積極的に関わることで「自分力」が磨かれます。一人ひとり異なる個性や得意分野を持ち寄れば、より効率的に目標へたどり着けます。

 

教えること、教えられること

私は人に教えるのは苦手でした。逆に、後輩の学生と名古屋大学の総長から論文の書き方について指導されたことがあるくらいです。2人のおかげで、「読みたいと感じさせる」論文を書くように気を付けだしました。

 

自由こそ、アイデアの源

私はアイデアの多くは自分ひとりの頭の中で出していきました。しかし、こうしたことができるようになったのは、それまでに人と接し、人を認め、人と議論できる環境にいたおかげです。議論し合うことは大切です。

 

議論は自分との対話である

私は学生時代から誰彼かまわず議論をふっかけていました。議論を通して頭の中にある抽象的な考えを言葉にできるとともに、思考を飛躍させる効果もあります。議論相手は知識・経験が豊富な人でなくても構いません。議論中、相手の反応を見ることで、自分の間違いに気づくことがあるのです。だから、議論では相手に答えを求めないことが重要です。

 

天才の頭の中を知りたい

私は、今は亡き科学の巨人たちとも、ぜひ一度議論してみたい。特に、アルベルト・アインシュタイン、レフ・ランダウ、リチャード・P・ファインマンの3人です。日本人だと南部陽一郎先生です。

 

現代科学は団体戦

現代の科学は複雑化しています。たった一人で作業を行うのが難しくなっています。私の「6元クォークモデル」も数千人規模のチームと数十年という時間が必要でした。これからは「自分ひとり」に必ずしもこだわらず、必要に応じて最適な組織を作ることが大切です。

 

異なる価値観を認める

私自身の研究生活は、基本的には単独の狩猟民のようでした。それでも友人の異なる着眼点を尊重し、認め合うことは、自分の中の幅を広げることができます。これは、そのまま「自分力」を高めることにつながるのです。映画1つでも一人ひとり着眼点が全く異なります。

 

「自分力」が跳ね返ってきた日

自分力が自分自身に跳ね返ってきたことがあります。トップクォークの発見についてマスコミが私にしつこく取材したことがありました。

 

トップを意識して走り続ける

事業仕分けなどの研究分野に対する風当たりが強くなりましたが、基礎研究の分野では理論が実証されるまで数十年かかります。研究者にとってその研究は世界一・唯一無二である必要があります。だからこそ、本当に価値のあることに対して真摯に取り組む、時間をかけて取り組む姿勢をもっと大切にしてほしいです。これは教育でもビジネスでも言えることでしょう。また、何をやるにしてもトップの背中が見えるくらいの位置にいることを心がけるといいでしょう。

 

思考を整理し、正しく伝えるために

私は英語ができませんが、これからの時代は日本語と英語ができるほうがアイデアを正しく伝えることができるでしょう。理論物理学では実験ノートも不要なので、私は文章を書くのも苦手です。しかし、自分が楽しい・興味があることについて正確に他の人に伝える力はとても重要です。自分の考え・アイデアを文章にして整理してみましょう。

 

「自分力」で創造性も高まる

「自分力」を発揮するためには、「個人力」「チーム力」両方の能力をバランスよく発揮することが大切です。次章では、こうした「自分力」を活用し、どのように最終的な目標へとアプローチするべきなのか、という例について触れておきたいと思います。

 

 

第五章 「自分力」をいかに活用するか—目標へのアプローチ法

ロマンから創造へ

誰もが自分の憧れを具体的な目標とした時に、それは単なる憧れからロマンに変わります。そして、憧れやロマンを、最終的には創造へとつなげてほしいのです。

 

益川流記憶術

私は記憶力がよくありません。そのため私が工夫したことは、自分なりの公式を作る、ということでした。自分なりに公式を抽象化して暗記しました。できないなら、できないなりに独自の方法を考えて実践してみることです。

 

真理へのアプローチ法

問題に対する取り組み方一つとっても、そのアプローチ方法が物理と数学では異なります。物理の研究者は同じような例・現象から自分のアイデアを理論化します。(思考の具体化) ところが、数学者は何かを証明したいときはまず反論を探します。私はこの数学者のアプローチが好きです。アプローチの仕方は様々なので自分に合った方法を見つけ出してほしいです。また、じっくり腰をすえて問題に取り組んでほしいです。

 

推敲の大切さ

自分のことを客観的に見つめ、自分のアイデアや結論を推敲し、磨きをかけ、時には壊したり、捨てたりすることも必要です。私はこれを「肯定のための否定の作業」と呼んでいます。

 

予測を立てて動く

予測を立てれば、目標やゴールへと近づくことができます。予測するためには現状についてきちんと分析することが大切です。また、「武谷三段階論」を使えば目標のために、進むべき方向性が見えてくるでしょう。

 

結論から最初に戻ってみる

1つの現象を結論から逆に論理を組み立ててみると、今まで見えてこなかった可能性が見えてくることもあります。これを「思考の抽象化」と呼んでいます。私はこれで「6元クォークモデル」にたどり着きました。

 

棚上げのススメ

今すぐ解決できない問題については、とりあえず棚にしまっておいて、別の問題に取り組んでみるのもいいでしょう。一度しっかり考えてしまった問題は時間がたっても忘れません。タイミングが来ればするする前へ進むこともあるでしょう。

 

結果に失敗はない

私は研究生活で失敗したことがありません。どんな結果でも失敗だと認めませんでした。今まで考えていた方法でうまくいかないということは、問題解決のための新たな方法を発見するチャンスです。往々にして予想通りではないところに、実はとても面白いことが潜んでいるのです。

 

目標へと近づくために

私が抱いた「憧れ」は、物理学の分野で新たな真理を発見する、というものでした。みなさんも、自分の「憧れ」を目指し、一歩でも近づく努力をしてほしいと思います。

 

よりよい未来へ向けて

人材育成に関して「世界を相手に勝負できる人材を育成する」とよく耳にします。しかし、研究分野に対する費用対効果も問われ出しており、残念と感じています。これからの日本で必要とされる人はイノベーションができる人です。これは学校の試験で高得点を取ることを目指してもそのような人材にはなれません。では、どうすればいいのでしょうか。これからの人たちは、もっと自分の「好きなこと」を見つめなおし、才能を見極め、目標を設定し、一歩一歩目標に向かって進める人になってほしいと思います。

 

 

ノーベル物理学者が教える 「自分力」の磨き方 (知と学びのシリーズ)

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